抑えていた感情が爆発 筒香4番の仕事
© photograph by Hideki Sugiyama やはり、筒香嘉智が打つことはDeNAにとって大きな意味がある。苦しんだ福岡で、今度はどんな戦いを見せてくれるだろうか。
ヤフオクドームでの1、2戦が終わった時点の正直な感想は、「チームの力が違いすぎる」ということだった。
例えば第1戦、1番の柳田悠岐と桑原将志、2番の今宮健太と柴田竜拓……と両チームの1番から9番までを個々に比べてみても、全てソフトバンクの方が上に見えた。DeNAのファン視点で見ると「せめて4番の筒香嘉智くらいは」と思うのだが、こういう大舞台の4番として何とかする力は、内川聖一の経験に一日の長がある。
ともに1、2戦はそれほど調子がいいようには見えなかった。しかし第2戦、逆転の場面となった7回2死一、二塁からムリに決めにいかず、四球で中村晃の逆転打を呼び込んだ場面などは、内川の「何とかする4番」としての真骨頂だった。
舞台を横浜に移しても、内川が徐々に調子を上げて第3戦では先制打を含む2安打。一方DeNAがようやくシリーズ初白星を挙げた第4戦でも筒香は連続三振を含むノーヒットと、本来の「決める4番」としての勝負強さが影を潜めたままだった。その結果、試合後のレビューで「あとは主砲だけ」と、書かざるを得なかった訳である。
4番の勝負、先に「何とかした」のは内川だった。
そして迎えた第5戦。シリーズはついに4番の勝負になった。
先に「何とかした」のは内川だった。
1回だ。すっかり調子を落としてしまった3番のデスパイネが中飛に倒れた2死二塁。DeNA先発の左腕・石田健大の外角スライダーを逆らわずに右方向に打ち返した。
「何とか流れをこっちに持ってきたかった」
黒星を喫した第4戦で途切れた初回得点を再び呼び戻す、先制の右翼線タイムリー二塁打を放ったのだ。
18打席目で出た、自分のスイングとホームラン。
一方の筒香は、ソフトバンク先発のリック・バンデンハークのキレキレの立ち上がりに2回の第1打席は空振り三振を喫した。しかし1点を追う4回2死二塁、待望の一発が飛び出した。
カウント1ボール1ストライクからの3球目。バンデンハークの153キロのストレートを、逆らわずに左手で長いフォローを作ってバックスクリーン左へ運んだ。
「ホームランは意識していませんでしたけど、自分のスイングでうまく押し込むことができた」
シリーズ通算18打席目で、ようやく飛び出した待望の1号だった。3つのベースを蹴ってホームに戻った筒香は、両手を広げて一塁ベンチで待つナインとハイタッチを繰り返した。
そして「決める4番」としての仕事は、これだけでは終わらなかった。
5回には石田が逆転を許した。デスパイネの犠飛で同点に追いつかれた2死から、内川にしぶとく左前安打でつながれ、中村の勝ち越し2ランを浴びたのだ。その裏には先頭の戸柱恭孝の二遊間を破ろうかという当たりを今宮が、また2死二塁から倉本寿彦の三塁線を破ろうかという当たりを松田宣浩が、それぞれファインプレーでいずれも阻止した。
まさにソフトバンクにいきかけた流れを、主砲の一撃が再び引き戻した。
「全員でつないで、つないで点を取ったのが嬉しい」
2点を追う6回の攻撃だ。
先頭の桑原が三遊間を破って出塁すると、2番・柴田の3球目に二盗。柴田は投ゴロに倒れたが、ロペスが歩いた一、二塁で打席に筒香を迎えると、ソフトバンクベンチが動いた。先発のバンデンハークを諦めて左腕のリバン・モイネロを当ててきたのだ。
だが、その継投は失敗に終わった。カウント2ボール1ストライクからの4球目。真ん中に入ってきたチェンジアップを、筒香が再び逆らわずに打ち返した。一瞬センターフライかと思わせる低い弾道だったが、そこから伸びる。必死に追いかけた柳田の頭上を越えて中堅フェンスを直撃した打球が、グラウンドに弾んだ。これで1点差。
さらに5番の宮崎敏郎の中前適時打で追いつくと、最後は代打・嶺井博希の二塁へのゴロに併殺を焦った二塁手の明石健志が、これをファンブル。その間に筒香がホームを駆け抜けた。
「全員で勝ち取った勝利だと思います。全員でつないで、つないで点を取った。ホームランより嬉しかった」
決勝のホームを踏んだ直後に、普段はポーカーフェイスの男が珍しく両手を掲げて万歳を見せた。抑えていた感情の爆発だった。ようやく仕事ができた喜びだった。
ラミレス監督も「まさに4番の仕事をしてくれた」。
「まさに4番の仕事をしてくれた」
主砲復活を一番喜んだのは、アレックス・ラミレス監督だったかもしれない。
「昨日は調子が良くなかったけど、今日は必ずやってくれると思って信じていた」
そして筒香も確かに逆転への手応えを感じて、お立ち台でこう吠えた。
「あと2勝したら日本一。浮かれることなく気を引き締めて福岡に行きたい。日本一になって、ファンのみなさんに恩返しをしたいと思います!」
開幕3連敗から連勝して敵地に乗り込んだチームは、1958年の西鉄、'86年の西武、そして'89年の巨人といずれも連勝で日本一を手にしている。V確率100%という吉兆データも心強い。
しかし、ソフトバンクも楽天とのCSファイナルステージで、パ・リーグのチームで過去に突破率0%だった連敗スタートを喫した。そこからそのデータを覆す3連勝で勝ち上がってきたという実績もある。
9回にはDeNAの守護神・山崎康晃を満塁まで追い詰めたソフトバンクの猛攻。4番・内川もまた三遊間安打でつないで「何とかする4番」力は健在だった。
4番の勝負。まさに残り2試合はこの2人の大黒柱の働きにかかることになる。
