OB提言 由伸監督は「辞める」宣言を
巨人はセ・パ交流戦を6勝12敗、12球団中10位で終えた。首位広島に11.5ゲームの大差をつけられた惨状で、23日の中日戦(東京ドーム)から同一リーグ内の対戦を再開する。テコ入れ策として鹿取義隆GMが誕生したが、指揮官である高橋由伸監督(42)の責任は問われなくて良いのか。巨人OBで、かつてヤクルト、西武を弱小球団から日本一へ育て上げた名将、広岡達朗氏(85)は、来季も生え抜きの高橋監督続投を支持。ただし、前提として厳しい条件を突き付けた。
「私は由伸を責めるつもりはまったくありません。なぜなら彼は勉強する時間も、経験を積む機会も与えられないまま就任したからです。彼を監督にしたフロントの責任ですよ」
まず広岡氏はこう断言した。
高橋監督は2015年オフ、本人は現役続行を強く望んでいたにも関わらず、クライマックスシリーズ敗退をうけて辞任を表明した原辰徳前監督の後任として、球団側の要請を受け入れる形で就任した経緯がある。15年に選手兼任打撃コーチを1年間務めた程度で、指導経験といえるものは皆無に近かった。
広岡氏は「私は長嶋監督(現終身名誉監督)時代に『チョーさん(長嶋氏)、永久に監督を務めることはできないんだ。在任中に次の監督を育てなければいけない。しかるのちに監督の座を譲り勇退すべきだ』と助言しました。長嶋は『ヒロさん、その通りだよ』と言って原をコーチとして迎えて後継者にした。しかし、原は誰もつくらないまま辞めてしまった」とも指摘する。
「本来なら、他球団の中日でもコーチを務め苦労して戻ってきた川相(現3軍監督)あたりに2-3年“つなぎ”で監督を任せ、その間に由伸に2軍で勉強させるべきでしたが、今さら言ってもしようがない。今季はどれだけ負けても構わないと思う。負けることが来季へ向けて勉強、いい薬になりますから」
性急に監督のクビをすげ替えても、同じ失敗を繰り返すだけ。ならば、黒星を重ねながら生え抜きのスターである高橋監督に勉強と経験を積ませる方が得策というわけか。
実は広岡氏は昨季終了後、就任1年目を終えた高橋監督を都内某所に呼び、約2時間にわたって“帝王学”の講義を行ったという。
そこではのっけから「1年間見てきたが、どんな野球がやりたいのか見えなかった」とズバリ指摘したのだとか。
青天の霹靂で就任した高橋監督にしてみれば、監督としてのビジョンを描くヒマもなく、手探りのまま1年目を終えてしまったのかもしれない。
また、高橋監督はコーチの職域を犯さないように気を使っているのか、ピンチに自らマウンドへ駆けつけて味方投手にゲキを飛ばすようなことは、まずない。
広岡氏は高橋監督に「技術的なことは尾花(投手コーチ)に任せておけばいい。ただ、投手が逃げ腰になっていると感じたときには、自らマウンドへ行ってゲキを飛ばすのが効果的だ」とアドバイスしたという。
また、現役時代からクールなイメージだった指揮官は、ベンチに座っていてもポーカーフェースで表情を変えることがほとんどない。「連敗もまるで他人事のよう」と評されることまであった。
これには原前監督が4月、スポーツ報知に寄せた観戦記で「高橋監督に意識してほしいのはベンチ内で喜怒哀楽を出す『動』だ。ベンチでどんなことが起きても表情を変えずにいることもスタイルかもしれないが、仲間たちに『今、俺はこう思っている』という意思表示をすることは大切だ」と提言していた。
広岡氏も「由伸はコーチに対し『自分はこういう野球をやりたいから、この選手にこういうことをできるようにしておいてくれ』と明確に伝えているか。あるいは『どういう意図で、どういう教え方をしたのか』とコーチを問いただしているか。おそらく十分ではないと思う」と危惧。その上でこう語った。
「由伸には、来季契約を結ぶ際に実行してほしいことがあります。フロントに自分の口で『監督をやらせてほしい』と言うことです。そして『来年優勝できなければ、責任を取って辞めます』と宣言するのです。それくらいの覚悟がなければダメだし、口に出すことで責任感、取り組み方が変わってきますよ」
無理やり監督に祭り上げられた経緯への同情からか、生え抜きの切り札だからか、巨人がこれだけ負けても、OBの間からは高橋監督が悪い、辞めさせろという声はほとんど聞こえてこない。その大多数は安易な監督交代ではなく、高橋監督に“クール”な殻を破り変貌を遂げてほしいと願っているようだ。
