岸和田だんじり祭、耐え難い場所取り
© 産経新聞 提供 除去した後にすぐに貼られていた場所取りの粘着テープ=1日、岸和田市
16、17の両日に行われる大阪府岸和田市の「岸和田だんじり祭」。高さ約4メートル、重さ約4トンの各町のだんじりが城下町を疾走する勇壮さで知られるが、粘着テープを地面に貼る地元見物客の「場所取り」も祭りに劣らず激しいのは有名な話だ。通行人が道路標識と勘違いする危険性があるなどとして、主催者がテープを取り除いても、すぐに貼り直される。一向にマナーが改善されない状況に業を煮やした府警岸和田署は今年、初めて除去作業に加わり、指導に乗り出した。
「取っても、取っても…」
「とるな」「しばく」-。祭りのメーンエリア約300メートルにわたって場所取りのために貼られた粘着テープに書かれた文字だ。
8月28日、祭りの運営関係者や岸和田署、市観光課の職員ら約30人が集まって行われた現場確認。いたる場所で同様のテープが確認でき、関係者は「取っても取っても貼っていかれる」と深いため息をついた。
路上には剥がしにくいように名刺大に切られたテープが歩道やガードレールに張られ、一枚一枚に町の名前などがペンで書き込まれている。中には「去年からとってるのでとらないで」と書かれたものもあった。
結局、この日はそのまま除去作業が始まり、約2時間で45リットルのポリ袋4袋分のテープを剥がし終えた。
ところが、こうして場所取りのテープを取り除いてもすぐにまた貼られる-の繰り返しで、「まさにいたちごっこだ」と関係者は困惑。市役所付近でも場所取りは横行しており、敷地内は市職員が不定期に巡回しては除去しているが、敷地外では作業が追いつかないのが実情だ。
過去には、ガードレールなどに結束バンドや自転車の盗難防止用ダイヤル式ロックチェーンで場所取りの看板をかけたり、確保したその場で当日に祭りを見物しながら焼き肉をして、使ったコンロをそのままシートに包んで放置したりするケースもあったという。
主催者がこれまで毎年、自主的に除去していたが、改善の兆しがみられず、ますますエスカレートしていく現状に、岸和田署が「見過ごせない」として昨年から主催者側に対応を要請。今年はさらに本格的に対処しようと、初めて主催者や市とともに除去作業に参加するようになった。
道路標識と間違える恐れ
道路法では、正当な理由などがないのに「道路を損傷、汚損すること」を禁じている。具体的には、道路を掘削したり、道路上にペイントしたりするほか、道路にごみなどを捨てる行為を指し、同署は祭りの場所取りも法律に抵触する可能性があると指摘。「テープを貼ると、通行人が道路標識と見間違えたりする危険がある。さらに雨が降れば、すべって転ぶ危険も発生する」と警鐘を鳴らす。
市観光課の担当者も「伝統と文化のあるすばらしい祭りだけに、次世代にいい形で残していってほしい」と町の品格とマナー向上を呼びかけている。